インピーダンスをできるだけ正確に測定する方法

インピーダンス測定

回路のインピーダンスを正確に測ることは易しいことではありません。浮遊容量の影響や測定誤差など、測定結果によりばらつきが出てしまうものです。今回は、この難しいインピーダンス測定を、LTspiceとADALMを使用して、できるだけ正確に測定するための方法を学びましょう。

周波数と部品の特性

インピーダンスは、「交流信号」に対する「抵抗成分」と言えます。これは、「周波数」によって、抵抗値が変わるということを意味しています。この辺りは、共振回路の講座で、詳しく説明していますので、抵抗、コンデンサ、インダクタについてのインピーダンス解説は、こちらを参照してください。

インピーダンス表記まとめ

インピーダンス(直列) アドミッタンス(並列)
抵抗 R \(Z_R = R \) \(Y_R = \frac{1}{Z_R}=\frac{1}{R}\)
コンデンサ C \(Z_C = - \frac{1}{j \omega C}\) \(Y_C = \frac{1}{Z_C}=-j \omega C\)
インダクタ L \(Z_L = j\omega L \) \(Y_L = \frac{1}{Z_L} = \frac{1}{j \omega L}\)

測定が難しい要因

インピーダンス測定の難しさは、測るたびに安定した値にならないことです。測定前には、3つのポイントに注意して、測定するようにしましょう。

  • 周波数
  • 測定環境
  • DCバイアス

ポイント1. 周波数の安定

インピーダンス測定では、数十Hzから数MHzの広い範囲にわたって正弦波を与える必要があります。この周波数に、揺らぎや不安定な要素があっては、安定した結果が得られません。なので、安定した正弦波の周波数を与えることができるというのは、非常に重要なポイントなのです。

ポイント2. 測定環境の安定

周波数に続いて重要なポイントが、測定環境です。インピーダンス測定は、実に繊細な測定手法です。高価な専用機は、それを物語っていると言えます。抵抗はもちろん、コンデンサやインダクタも測定する温度や測定するプローブの容量、浮遊容量など外的な要因により、測定のたびに結果が変わるといったことが度々発生します。従いまして、測定の際は、1回だけの測定ではなく、何回かデータを取ってその平均をとるといったことが行われています。

ポイント3. DCバイアスの安定

DCバイアスは、測定回路、測定器で発生する微弱な電圧のことです。厳密に言えば、回路の配線とプローブの素材が異なると熱が発生します。この熱による熱起電力が電圧となり、測定回路のDC成分となりえます。

このように、安定した計測が難しいインピーダンスの測定ですが、多くの場合、何回か測定することでその平均値による算出や周波数の変化するスピードを変えるなど、測定システム全体で評価します。今回は利用しませんが、専用の「インピーダンス測定器」を使用すれば、比較的安定した計測ができるようになってきました。そういった機材を利用する機会があれば、利用してみてもいいでしょう。

インピーダンスの測定方法

インピーダンスを測定する簡単な方法は、回路に周波数fを与え、その時の抵抗とリアクタンスをプロットして導いていく手法を用います。

プロットしていくためには、インピーダンスの大きさと、角度を知る必要があります。インピーダンスの大きさと角度がわかれば、ボード線図にプロットも可能です。

インピーダンスの大きさ

インピーダンスの大きさは、以下の式で算出できます。

\( 大きさ = \sqrt{(R^2 +(X_L -X_C)^2)}\)

インピーダンスの角度

インピーダンスは、容量性および誘導性起因による抵抗と抵抗の大きさで、角度が変わります。その時の算出方法です。

\( 角度 = \tan^{-1}{(\frac{X_L- X_C}{R})} \)

単位円

インピーダンスは、抵抗(R)とリアクタンス(X)との組み合わせで表すことができます。基本的には、ベクトルで表す方法と同じです。このときに用いられるのが、「単位円」です(図1)。

図図1:単位円

ガウス平面、複素平面に単位円を組み合わせて表記されるグラフです。単位円を用いると、インピーダンスの大きさと角度を視覚的に知ることができます。

ADALM1000のインピーダンス解析

ADALMでは、Alice Toolでインピーダンス測定が利用できますので、積極的に利用していきましょう。

インピーダンスを測定する準備

それでは、実際に測定するにあたり、回路の周波数特性を見ておくと、より理解が深まります。

事前に回路や周波数特性を調べるには、LTspiceを利用すると便利です。

LTspiceによる周波数特性の事前検証

今回計測する回路をLTspiceで見ておきましょう(図2)。

図図2:LTspiceによる回路構成

この回路に、10Hzから100KHzの信号を入れた場合の周波数に対するゲインと位相をボード線図で確認しました(図3)。

図図3:ボード線図による回路の特性

V(n002)は、R1とR2のポイントで計測しています。I(C1)は、C1に流れる電流をベースに、周波数特性を表示しています。この図から、1.6KHz近辺で、共振が発生し、位相が0になっています。

ADALM1000とLTspiceで周波数特性を合わせる

LTspiceでは、理想的な部品の元にシミュレーションを行なっていますが、実際には部品のリード線や配線に含まれるインダクタ成分、容量性のリアクタンスが含まれています。

LTspiceで使った回路と同じ構成を実際のパーツで構成してみましょう(図4)。

図図4:RCLで構成した今回の回路(ブレッドボード使用)

この時のADALMの周波数特性をみてみましょう(図5)。

図図5:RCLで構成した今回の回路の周波数特性

実際のパーツで計測すると、1.6KHzではなく1KHzあたりで位相が0°になっていることが確認できると思います。

ここで、1KHzくらいに位相が0°になるようにLTspiceでパーツの調整をしてみました。インダクタのみ、10mHから25mHにしてみました(図6)。

図図6:実機の波形に近づけてみたLTspice回路

このように、理想的な環境と実際のパーツの違いをシミュレータで事前に確認することも重要です。

インピーダンス・アナライザで測定する

インピーダンス・アナライザの準備

いよいよ、ここからはインピーダンス・アナライザを使ってみます。図7のように「Enab Impedance」にチェックを入れておきます。

図図7:インピーダンス測定するための準備

チェックを入れて、「Impedance」ボタンをクリックすると、図8のような画面が表示されます。

図図8:インピーダンス測定画面

この画面とボード線図(10Hzから10KHz)が連動します。この画面では、回路のインピーダンスの他に、位相、ゲイン、リアクタンスとインピーダンスのベクトルなど多くの情報が得られます。緑の線は、抵抗の大きさを表しています。周波数には依存しないパラメータです。赤い線は、リアクタンスの大きさを表します。角度は位相を表し、下に向いているときは、容量性のリアクタンスを、上に向いているとときは、誘導性のリアクタンスを表記しています。オレンジ色の線は、その合成インピーダンスです。インピーダンス角も数値で表記されています。

LTspiceでは、このような図が表示されないので、ADALMで周波数ごとの変化を見ていきましょう

低い周波数の場合

はじめは、10Hzからのスタートします。図9および図10は、366Hzあたりの周波数に差し掛かった時のインピーダンスの状態です。容量性のリアクタンスが、どのくらいなのかも「Series Capacitance」で表示されています。回路には、1uFを使用しているので、908.040nFと表示されているので、コンデンサの容量も認識されていると言えます。

この時のインピーダンスの大きさは、701.0 Ohm、位相角は、-43°ということがわかります。

図図9:ボード線図画面

図図10:インピーダンス測定画面

共振周波数の場合

共振周波数である1KHzの波形を図11および図12に示します。1KHzあたりでは、抵抗の値が470 Ohmに対して、500 Ohmで表示されています。トリガを止めたポイントは、1.1KHzですが、すでに位相はクロスしてしまった後になっています。インピーダンス的には、容量性も誘導性も相殺されているように見えますので、リアクタンスの要因は少ないと言えます。その時の「Series Capacitance」は、1.502uFと表示されています。1uFのコンデンサ容量以外の成分も検出していると言えます。

この時のインピーダンスの大きさは、509.5 Ohm、位相角は、-10.7°ということがわかります。

インピーダンス的には、ほぼ抵抗のみの値を示していると言えます。

図図11:ボード線図画面

図図12:インピーダンス測定画面

高い周波数の場合

共振周波数である1KHzを超えた場合は、誘導性のリアクタンスが支配的になります。その時の波形を図13および図14に示します。7.6KHzあたりでは、抵抗の値が470 Ohmに対して、522 Ohmで表示されており、増加していることが伺えます。

その時の「Series Capacitance」は、誘導性になっているため「Series Inductance」になっており、9.90mHと表示されています。10mHのインダクタを使用しているので、インダクタの成分も検出していると言えます。

この時のインピーダンスの大きさは、708.3 Ohm、位相角は、42.5°ということがわかります。

インダクタの要因が支配的の時には、Qも算出されています。

図図13:ボード線図画面

図図14:インピーダンス測定画面

まとめ

インピーダンス測定は、電子回路の計測の中でも誤差や精度が問われ、測定プロセスも重要です。加えて、高品質な回路設計には欠かせない技術であり、すべての周波数帯で必要となる重要な技術要素です。今回は、基礎的な内容ではありますが、交流回路、素子の特性などこれまでの講座のエッセンスが凝縮されています。ぜひ、繰り返し学習することで、検索に頼らないスキルの一つとして身につけましょう。

前の記事を読む