オームの法則とは
オームの法則は、いわずと知れた電気回路計算の基礎中の基礎中の基礎ぐらい重要です。オームの法則は、いろいろなサイトにわかりやすく解説してありますが、「抵抗に電圧をかけた時に流れる電流を求める(比例関係)」法則と考えてください。
オームの法則がすごいのは、2つの要素がわかれば、かならず求めたものが引き出せることです。電圧を求める場合は、V = I x Rとできますし、抵抗を求める場合はR = V / I、電流を求める場合はI = V / Rと表せます。また、直流だけでなく交流にも適用でき、今日のエレクトロニクスの礎となっています。
抵抗を求める場合
抵抗は、与えられた電圧をどれだけ電流として流してあげられるか?ということです。5Vを5A流すには、抵抗は1オームです。5Vを50mA流すには、100オームです。5Vを0.5mA流すには、10Kオームです。簡単ですよね?これがわかれば、プルアップ抵抗やプルダウン抵抗をどのような値にすればいいかわかります。定格以内に収めるように指定するのがポイントです。
- 例1:
- 3.3V、16mA:Sinkの場合 206オーム→E12系だと、220(15mA:Sink)
- 3.3V 4mA 825オーム→E12系だと、1K(3.37mA)
- 例2:10mAで点灯するLEDに3.3Vを繋いだ場合の抵抗値は? 330オーム E16系だと332オーム。という具合です。よく回路図に332オームがぶら下がってませんか?
- 例3:AC100Vで、1A消費する電気製品の場合、通電時の抵抗が100オーム相当と考えることができます(実際にはAC周波数の計算を行う必要があります)。
電力を求める場合
求める電力値 = 電圧 x 電流です。電圧と電流がわかれば、その電力(W)が算出できます。
最近では、IoTと言われているものは、低消費電力化が求められています。なので、ちょっとした回路の計算でも電力を求めておくのが、エンジニアってもんです。
1.8Vで20uA消費する場合、36uWと計算できます。ボタン電池CR2032(220mAh)で運用すると、約6000時間動かせるという計算になります。6000時間というと、254日相当です。半年ちょっという感じでしょうか。
PixelPulse2とは
PixelPulse2は、直感的に操作しやすいツールですが、1つだけ知っておいたほうがいいものがありますので、ご紹介します。
PixelPulse2には、左上にギアのアイコンの設定メニューがあります。その設定メニュー内に「Repeated Sweep」という項目があり、PixelPulse2のRepeated Modeを指定します。この項目にチェックが入っていると、PixelPulse2上では綺麗に見える波形でも、実際にオシロで波形を確認すると分断されていることがわかります。これは、サンプリングする間隔にインターバル時間を設けて、PixelPuse2上では静止して見えるようにしています。そして、このRepeated Modeを外すと、トリガポイントがわからず、画面からは流れてしまって見えます。
しかし、この流れてしまっている波形をオシロで確認すると、連続的に波形が出力されているのがわかります。Repeated Modeをうまく使いこなして、電子回路に流れる信号の様子を確かめてみてください。
ADIのEngineerZoneを活用しよう
ADIのQ&Aコミュニティサイト「EngineerZone」はご存知ですか?英語で質問しなければいけないですが、返信はかなり早いです。実はワタクシ、前記のRepetaed Modeの挙動がわからずに質問したのですが、すぐに答えが返ってきました。出来るかぎり丁寧に状況を書いた甲斐あってか、すぐに期待した回答を得られることができました。英語の壁は確かにあるとは思いますが、これからの未来を背負っていくには、どうしても英語は避けて通れませんので、どうしたらいいかわからない!と思ったら、頑張って英語で質問してみてください。Let’s Try Active Learning!
ADALP2000とは
この講座では、オームの法則に加えてADALP2000についてご紹介します。ADALP2000は、ADALM1000向けに用意されたディスクリート・パーツ・キットです。内容については、冒頭の動画でご理解いただけたかと思いますが、役割だけさっとおさらいしておきます。
ブレッドボード
ブレッドボードは半田ごてを使用せずに、電子回路を構成することができる実験用のボードです。ブレッドボードで試して、基板を作り直してもいいですし、ブレッドボードが基板になったものもあるので、そのまま実装することも可能です。最低でも1台は手元にあるといいでしょう。
抵抗
抵抗は、電圧や電流を制限するために使われる素子です。リード付きのものは、色が付いており、抵抗値がわかるようになっています。耐W数のバリエーションがありますので、電力に応じたバリエーションを選んで使用します。表面実装タイプから、スルーホール対応のものまで、バリエーションも幅広いです。精度に応じて系列があります。
抵抗カラーコードの覚え方
黒 | 0 | 黒い礼服(くろいれいふく) |
茶 | 1 | お茶を一杯(おちゃをいっぱい) |
赤 | 2 | 赤い人参(あかいにんじん) |
橙 | 3 | だい3者(だいさんしゃ) |
黄 | 4 | 岸恵子(きしけいこ)※昔の女優さんの名前です。 |
緑 | 5 | 嬰児(みどりご)※赤ちゃんのことです。 |
青 | 6 | 青二才のろくでなし(あおにさいのろくでなし) |
紫 | 7 | 紫しち部(むらさき しちぶ) |
灰 | 8 | ハイヤー(はい やー) |
白 | 9 | ホワイトクリスマス(ほわいとくりすます) |
金 | 精度±5% | |
銀 | 精度±10% |
抵抗/コンデンサ/インダクタのE系列一覧(JIS C5063)(*1)
1.0 | 2.2 | 4.7 |
1.0 | 1.5 | 2.2 | 3.3 | 4.7 | 6.8 |
1.0 | 1.2 | 1.5 | 1.8 | 2.2 | 2.7 | 3.3 | 3.9 | 4.7 | 5.6 | 6.8 | 8.2 |
1.0 | 1.1 | 1.2 | 1.3 | 1.5 | 1.6 | 1.8 | 2.0 | 2.2 | 2.4 | 2.7 | 3.0 | 3.3 |
3.6 | 3.9 | 4.3 | 4.7 | 5.1 | 5.6 | 6.2 | 6.8 | 7.5 | 8.2 | 9.1 |
10.0 | 10.5 | 11.0 | 11.5 | 12.1 | 12.7 | 13.3 | 14.0 | 14.7 | 15.4 | 16.2 | 16.9 |
17.8 | 18.7 | 19.6 | 20.5 | 21.5 | 22.6 | 23.7 | 24.9 | 26.1 | 27.4 | 28.7 | 30.1 |
31.6 | 33.2 | 34.8 | 36.5 | 38.3 | 40.2 | 42.2 | 44.2 | 46.4 | 48.7 | 51.1 | 53.6 |
56.2 | 59.0 | 61.9 | 64.9 | 68.1 | 71.5 | 75.0 | 78.7 | 82.5 | 86.6 | 90.9 | 95.3 |
10.0 | 10.2 | 10.5 | 10.7 | 11.0 | 11.3 | 11.5 | 11.8 | 12.1 | 12.4 | 12.7 | 13.0 |
13.3 | 13.7 | 14.0 | 14.3 | 14.7 | 15.0 | 15.4 | 15.8 | 16.2 | 16.5 | 16.9 | 17.4 |
17.8 | 18.2 | 18.7 | 19.1 | 19.6 | 20.0 | 20.5 | 21.0 | 21.5 | 22.1 | 22.6 | 23.2 |
23.7 | 24.3 | 24.9 | 25.5 | 26.1 | 26.7 | 27.4 | 28.0 | 28.7 | 29.4 | 30.1 | 30.9 |
31.6 | 32.4 | 33.2 | 34.0 | 34.8 | 35.7 | 36.5 | 37.4 | 38.3 | 39.2 | 40.2 | 41.2 |
42.2 | 43.2 | 44.2 | 45.3 | 46.4 | 47.5 | 48.7 | 49.9 | 51.1 | 52.3 | 53.6 | 54.9 |
56.2 | 57.6 | 59.0 | 60.4 | 61.9 | 63.4 | 64.9 | 66.5 | 68.1 | 69.8 | 71.5 | 73.2 |
75.0 | 76.8 | 78.7 | 80.6 | 82.5 | 84.5 | 86.6 | 88.7 | 90.9 | 93.1 | 95.3 | 97.6 |
(*1) スマホ等ディスプレイが小さい環境で閲覧する場合は、横向きにしてご覧ください。
- 例:差動回路のプルアップ抵抗の49.9オームは、E96系列のラインナップです。差動回路の場合は、インピーダンスマッチングがあるので、E96系列の使用がオススメです。
- 例:LEDプルアップ・プルダウン用抵抗332オームは、E48系列です。LEDの場合はE24系列の330オームに置き換えても大丈夫です。
コンデンサ
コンデンサは、電荷を一時的に蓄える性質を持つ素子です。直流は通さずに、交流を通す性質があります。抵抗と同じで、耐電圧が明記されています。それを超えるような電圧がかからないように部品を選ぶ必要があります。表面実装タイプやリード付きがあります。表面実装タイプだと、容量が確認できないものもあります。
コイル
コイルは、直流分に含んだ交流成分を分離する性質があります。電源などに多く使用されたり、コイル同士を鉄心で繋いだものをトランスと言って、電圧を変換するときなどに使用します。
ワイヤー
素子同士を接続するための配線部材です。
スピーカー
圧電素子が組み込まれたスピーカーです。圧電素子に電圧をかけて振動させて、音を鳴らします。一般的には、コイルベースのスピーカが多いです。コイルに流れる電流の変化を磁力に変えて、音を伝えます。
マイクロフォン
コンデンサタイプのマイクです。電極に直龍電圧をかけて、音の変化を電圧で検出します。
ダイオード
正極と負極が接続された半導体で、流れる向きが固定されている素子です。
トランジスタ
ダイオードに、正極あるいは負極がさらに接続された半導体で、電流を制御することで増幅することができる半導体です。
FET
トランジスタと仕組みは同じですが、基本的に電圧のみを扱うことができるので、電圧を制御して増幅させることができる半導体です。
OPアンプ
+入力とー入力を併せ持ったアンプの半導体です。出力を入力側に戻す帰還をすることで、いろいろな大きさの電流や電圧を出力することができる汎用性の高い半導体です。
これだけあれば、手元でできる実験としては十分なのではないでしょうか。もっと高速な信号を扱いたいときや、もっと高精度に調べたい時は、専用の測定器を使うのがいいでしょう。
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