コンデンサとは?
世に出回っている電子機器で、コンデンサを搭載していない電子機器はないと言ってもいいくらい、欠かすことができない重要な素子です。この講座では、電子回路に不可欠なコンデンサの動きや働きを学びます。充電や放電に必要な時定数を理解して、意のままに電気信号をコントロールしましょう。
コンデンサの性質【充電と放電】
コンデンサは、電気を貯める素子であることは第2回で軽く触れていますが、今回の講座を理解するための補足をします。コンデンサには、主に3つの機能があります。1つ目は、電気の充電と放電。2つ目は、直流と交流で動きが変わる。3つ目は、フィルタです。
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電気を貯める構造にするには、電気を保存するための何らかの材料が必要です。その材料に電極を付けたものが、コンデンサです。この電極に+の電気を与えると、材料が帯電し、+とーの電荷になり、材料内部を移動します。どのくらいの電荷を蓄えられるかは、その容量を示す「F(ファラッド)」と呼ばれる単位で表されます。コンデンサは、電気を貯める素子でありますが、電池の表記と異なりますので、単純な比較はできません。
コンデンサの性質【直流と交流】
コンデンサは、抵抗と大きく異なる性質があります。それは、直流は通さないということです。抵抗であれば、直流・交流に限らず、通すことができます。しかし、コンデンサについては、交流だけ通すことができるのです。もう少し具体的に表現すると、コンデンサは充電・放電することで、コンデンサ内部の電気(「電荷」(でんか))が移動することで、電流となって現れます。つまり、「電荷が移動する=電流が流れる」と同意となります。
コンデンサの性質【フィルタ機能】
コンデンサは、抵抗やコイルなどとも合わせて、様々な信号を除去したり取り出したりすることができます。ノイズ対策や、今後の講座で解説するフィルタにとても影響を与えます。
定常状態と過渡状態
ここからは、コンデンサの動作である充電・放電に伴う現象を見ていきましょう。まずは、抵抗とコンデンサが直列につながった直列回路(RC直列回路とも言います)を用いて考えてみます(図4)。冒頭の動画では、1Kオームと1uF(マイクロファラッド)の電解コンデンサをつないでいます。電解コンデンサは、+/-の極性があります。
ここで、この回路に図5のようにあるタイミングで電圧を与えます。ちょうどスイッチをONにしたような状態と考えてください(図6)。冒頭の動画では、実際にスイッチは使っていないので、直接ジャンパー線をつないだり、外しています。
ここで、スイッチをONにした時の波形を図にしました(図7)。スイッチをONにする前の状態と、スイッチONにしてしばらくして安定した状態を「定常状態(ていじょうじょうたい)」といいます。なにも変化していないということと考えてください。スイッチをONにした瞬間から、電圧が上がってきます。この状態を「過渡状態(かとじょうたい)」と呼びます。この講座のテーマは、この過渡状態をもう少し掘り下げていきます。
時定数
図7からわかる通り、コンデンサを含んだ回路では、目的の電圧に達するのに時間がかかります(図8)。
電源ONした瞬間から、電圧が立ち上がってきて、最大電圧に対して、約63.2%のところまで要した時間τ(タウと呼びます)を「時定数(じていすう)」といいます。また、この時定数の5倍(5τ)の時間になると、ほぼ安定した状態になると考えることができます。立ち下がり時には、最大電圧から、63.2%まで減衰したところが時定数としています。
充電時における時定数
図9では、充電時における時定数のイメージです。
放電時における時定数
図10では、放電時における時定数の考え方です。放電時は、放電が開始されてから、63.2%の減衰したところまでの時間を時定数1τとする考え方です。放電時は、2τ、3τの定義もあり、2τまでに要した時定数では、14%まで減衰した時間としています。3τについては、5%まで減衰した時間としています。
時定数と周波数
冒頭の動画では、1Kオームの抵抗と1uF(マイクロファラッド)のコンデンサを使っていますが、この時定数は求めてみましょう。
式1にあるように、上記条件では、1msという値が計算できます。動画でも、1msのところにカーソルを持ってくると、約63.2%の電圧を確認することができます。では、この時定数1msで応答するのに必要な周波数はどのくらいになるでしょうか?
ここでは、時定数で対応可能な周波数について考えてみます。
冒頭の動画では、100Hzの矩形波を使用しています。なぜ100Hzにしているかというと、1msという時定数は電圧の立ち上がりから、1msの経過時間で、かつ電圧に対して63.2%という定義を説明しました。5τでは、ほぼ100%の電圧に達することから、1ms×5τ=5msとなります。この時間が矩形波の安定するまでの時間と考えると、High側、Low側の2つを考える必要があり、High側5ms、Low側5msとなり、10msの周期の矩形波を考えることになります。つまり、100Hzの矩形波という理由になります。
ここで、矩形波の周波数を徐々に上げるとどうなるでしょう?周波数を上げていくと、時定数1τの地点での電圧が63.2%から低下していきます。これは、1τまでの充電時間が下がることを意味しています。そうなると、十分に充電される前に、波形が変化するため、放電することになります。その後、十分放電される前に、波形が立ち上がってくるので、充電を開始します。
最終的には、十分な充放電ができない場合、電気が流れなくなり、半分の電位に収束します。この動きは、ローパスフィルタの動きになりますが、ローパスフィルタについては、今後の講座で解説します。
さて、ここまで時定数と周波数と電圧の関係を見てきました。冒頭の動画では、これまでの理論ぴったりではなく、若干の誤差が見て取れます。特に、時定数時の63.2%の電圧は、計算値と実測値で完全に合致することはなく、少し誤差が生じます。これは、コンデンサの容量の誤差や、抵抗値の誤差が含まれます。コンデンサの容量は正確に測定できていませんが、公称1uFに対して、数%の誤差を含んでいると考えた方がいいでしょう。また、抵抗は1Kオームに対して、手持ちのテスターでは、981オームを示しています。約2%の誤差です。
計算してみましょう
コンデンサの電圧
ここでは、これまでの動きを実際に計算してみましょう。時間とともに変化する電圧を計算できれば、最適な回路ができます。今回は、微分であったり積分といった公式を使いますので、しっかり学びましょう。
まずは、コンデンサの電圧式を導いておきます。
電流値の計算
次に、図4の回路を、キルヒホッフの法則を使って式を組み立てて、電流を導き出します。
過渡状態におけるコンデンサの電圧の計算
次に、過渡状態におけるコンデンサの電圧を計算してみます。
過渡状態における抵抗の電圧の計算
最後に、過渡状態における抵抗の電圧を求めてみましょう。これまでの式の結果から求めることができます。
計算式のまとめ
下表に計算式の結果をまとめてみました。
確認してみましょう
今回の講座の内容を理解するために、下記の2問に挑戦してみてください。答えは、次回のこのコーナーでお伝えしますよ!
【Q1】コンデンサの容量を変えずに抵抗を小さくした場合、時定数はどのように変化しますか?
【Q2】1KHzの矩形波に対応するための時定数と抵抗を100オームを使用した場合のコンデンサの容量は何Fになるでしょうか?
前回の答え
【Q1】図6の端子間A-Bからみた合成抵抗値は2.48Kオームでした。
【Q2】図6の回路で、抵抗Rに1Kを使ってみました。この抵抗値を500オームから2Kオームまで変化させた場合、電流が一番流れる抵抗値は500オームのときでした。いかがでしたか?
500オームの代わりに470オームで抵抗を測ると、45.6オームでした。
1Kオームで抵抗を測ると、700オームでした。
2Kオームの代わりに2.2Kオームで抵抗を測ると、1.14Kオームでした。
まとめ
今回は、コンデンサの理解と抵抗を含んだRC直列回路における「過渡現象と時定数」について学びました。今回学んだ内容は、フィルタ回路などに応用することができますので、しっかり基礎を学んでおきましょう!Let’s Try Active Learning!今回の講座は、以下をベースに作成いたしました。
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