抵抗とコンデンサとコイルによる共振回路
共振回路(きょうしんかいろ)というと、少し難しく聞こえるかもしれません。同調(どうちょう)回路とも呼ばれたりします。よくラジオのチューナーに例えられます。若い人の中には、「ラジオのチューナー?」という人もいるかもしれません。テレビのチャンネルを合わせる。そんなイメージでもよいと思います。この講座では、そんな回路の動作原理を理論と実践で学びましょう。
受動素子における交流の扱い方
これまで学んだ受動素子(抵抗、コンデンサ、コイル)は、直流でも交流でも扱う機会が多いです。そんな受動素子の直流の場合の講座をこれまで展開してきましたが、ここからは少し交流について考えていきたいと思います。
交流とは?
交流とは、時間に対して電圧および電流が変化する電気信号として扱います。例えば、家庭のコンセント(英語ではOutletですよ!)には、100V 50もしくは60Hzの周波数を伴った交流電圧が使用されています。それに対して直流は、時間による変化がないことが大きな違いです。乾電池などが、直流に該当します。そして、交流の場合は、振幅の最大値に対する時間的な変化が起こります。それをsin(θ)で表します。さらに、「実効値(じっこうち)」と呼ばれる1周期の平均電圧値が存在し、最大電圧に対して、0.707倍の電圧値となります。家庭で、AC100Vと表記されるのはこの実効値です。最大では、141Vにもなる計算です。電流においても、同じ計算式が適用されます。
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図1:直流と交流
周波数と角周波数
教科書にも出てくる周波数と角周波数の関係を図2に示します。ω(オメガ)は何回転しているか?を長さで置きなおしていると言った方がいいのかもしれません。例えば3Hzの周波数の場合、1秒間に3周回ったという使い方になります。式も円周の長さを求める公式と同じ形をしてますね。
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図2:周波数と角周波数
抵抗における交流電圧と交流電流の関係
抵抗は直流においても、交流においても信号源を減衰させる事には変わりありません。図3に示されている交流信号源から抵抗が接続されている閉回路では、交流信号源の電圧は、最大振幅力Vmに対してsinθ分の係数で表せます。そして、その閉回路に流れる電流Irおよび抵抗にかかる電圧Vrとした場合、図3の式で示す電圧としてあらわされます。どちらもsinθは同じになるため、位相が同じ(同相「どうそう」)であるといいます。また、交流回路における抵抗値(正確には、抵抗成分)は、「インピーダンス」と呼ばれます。インピーダンスについては、後述します。
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図3:抵抗の交流回路
コンデンサにおける交流電圧と交流電流の関係
コンデンサは、直流の場合と交流の場合では動きが異なることは前々回講座で解説しました。コンデンサの場合は、図4の閉回路で電圧と電流の位相を比較すると、電圧に対して、電流の方が90度進んでいることがわかります。これはQ=CVで電圧印加と共に電荷が増えますが、印加電圧の増加に先駆けて+電荷と-電荷が引き合い電流が先に流れることから結果的に90度(2/π)進んでいます(図4中のグラフ)。この関係が、供給電圧の位相に対して90度ずれた形の電流として表せます。このため、位相が90度進んで見えます。式でも同様に、90度進んでいることがわかります。コンデンサの場合も、抵抗と同じように抵抗成分(容量リアクタンス「XC」とも言います。)を持ちインピーダンスで表します。インピーダンスについては、後述します。
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図4:コンデンサの交流回路
インダクタ(コイル)における交流電圧と交流電流の関係
インダクタの場合もコンデンサ同様、交流の場合では動きが異なることは前回講座で解説しました。コイルの場合は、図5の閉回路で位相を比較すると、電圧に対して電流が90度遅れていることがわかります。これは、コイルの逆起電力により打ち消された電流が、供給電圧位相から90度遅れた形で電流が流れます。電圧が最大に達すると、電流の変化がなくなり0になる。また、電圧が減少すると電流変化が生じ磁界が増し、電圧が0になった時点で最大の電流が流れる(図5中グラフ)。この関係が、供給電圧に対して90度ずれた形の電流として表せます。このため、位相が90度遅れます。式でも、90度遅れていることがわかります。コイルの場合も、抵抗と同じように抵抗成分(誘導リアクタンス「XL」とも言います。)を持ちます。同じくインピーダンスで表します。インピーダンスについては、後述します。
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図5:インダクタの交流回路
インピーダンスとアドミッタンス
ここまでの解説で、抵抗、コンデンサ、インダクタのインピーダンスを表にまとめました(図6)。
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図6:インピーダンスとアドミッタンスの表
直列回路の場合は、インピーダンス(Z)を元に計算します。並列回路の場合、インピーダンスの逆数である「アドミッタンス(Y)」で計算します。これは、図7の表にあるように、計算式を簡単にするためです。
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図7:インピーダンスとアドミッタンスの関係
しかも、コンデンサとインダクタとでは、値を入れ替えるだけで計算でき、最後に逆数にすればいいだけなので、簡単になることがメリットです。インピーダンスの計算には、抵抗だけで表される実数の部分と、コンデンサとインダクタで表せる虚数の部分から成り立っています。この虚数部の+側の成分と-側の成分に分かれており、+側は位相が90度遅れることを示し、-側は位相が90度進むことを表しています(図8)。
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図8:インピーダンスの実数と虚数のグラフ
また、インピーダンスは、抵抗、コンデンサ、インダクタで合成して考えますので、図9のようなベクトル図で示されます。ただ、今回学んでいる共振周波数を算出する場合には、抵抗のインピーダンスのみが存在し、虚数部の算出は、虚数部を0として考えますので、それほど難しいものではありません。虚数自体は、「j」を2乗すると-1になる決まりがあります。
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図9:インピーダンスのベクトル図
共振回路とは?
ここからは、共振について解説します。
共振は、同調とも呼ばれる現象です。回路に入力された交流信号が、特定の周波数でコンデンサとインダクタが存在しないかのような振る舞いをする現象です。実際にコンデンサやインダクタがなくなるのではなく、ここまで説明に出てきた交流信号時の抵抗成分である「インピーダンス」が深く関係しています。
並列回路における共振回路のメカニズム
図6の表で表示したように、抵抗以外は、周波数によってインピーダンスが変化することがわかります。例えば、並列RLC回路の場合は、インダクタは高周波の時にインピーダンスが高くなり、1/jωLで表します。コンデンサの場合は、低周波に対してインピーダンスとして作用し、jωCとして表します。
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図10:インピーダンスの変化による電流のグラフ例(並列回路時)
図10は、並列回路における周波数とインピーダンスの関係をグラフ化したものです。周波数0時点からインピーダンスが増加していきます。これは、インダクタのによるインピーダンスが増加していることを示します。そして、ある1点を境に、インピーダンスが減少していきます。これは、コンデンサによりインピーダンスが減少していることを示します。もう少しわかりやすくすると、並列回路では、それぞれ信号源に対して並列に接続されています(図11)。
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図11:周波数により、並列回路の通り方が違う
周波数が低い場合は、インダクタを経由して信号が流れていきますが、周波数が高くなると、コンデンサを通り信号が流れていきます。また、特定の周波数においては、コンデンサもインダクタも存在しない領域が発生し、抵抗のみの回路になります。この時の回路がどのような状態かというと、コンデンサによるインピーダンス、インダクタによるインピーダンスが等しくなることで打ち消され、抵抗だけのインピーダンスとなってる状態です。特定の周波数以外は、抵抗とコイルまたはコンデンサによるインピーダンスが最大になり、取り出せる電圧が最大化します。
RLCの並列回路で考えてみましょう
この内容をRLCの並列回路で考えてみましょう。
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図12:RLC並列回路
図12のように抵抗、コンデンサ、コイルが並列接続されている回路で構成されています。この時も考慮するのが「インピーダンス(Z)」なのですが、並列の場合は、インピーダンスの逆数である「アドミッタンス(Y)」という考え方が、計算方法を楽にしてくれることは前述しました。
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図13:回路のアドミッタンス
アドミッタンスにして並列回路を表すと、図13のようになります。
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図14:並列回路で共振するための条件
この回路が共振するための条件としては、コイルとコンデンサにかかる「アドミッタンス」が等しくなるという考え方です(図14)。この時の条件式は、図15のようになります。
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図15:並列回路で共振するための条件式
直列回路における共振回路のメカニズム
直列回路の場合も、インダクタは高周波の時に抵抗として作用しますが、インピーダンスはjωLで表します。コンデンサの場合も、低周波に対して抵抗として作用しますが、1/jωCとして表します。
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図16:インピーダンスの変化による電流のグラフ例(直列回路時)
図16は、直列回路における周波数とインピーダンスの関係をグラフ化したものです。周波数0時点からコンデンサによるインピーダンスが高く、周波数が上がるにつれて、コンデンサによるインピーダンスは減少していきます。そして、ある1点を境に、インピーダンスが最小になります。これは、コンデンサによるインピーダンスとインダクタによるインピーダンスが等しくなったことを示しています。この時、回路は、抵抗のみの回路と等価な状態になります。それぞれ直列に繋がっているため、並列回路とは動きが異なります(図17)。そして、周波数が上がるにつれて、インダクタによるインピーダンスが増加していきます。
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図17:直列回路は周波数に応じて通り易さが異なる
この抵抗のみの回路と等価になった時の回路は、コンデンサによるインピーダンス、インダクタによるインピーダンスが相殺され、抵抗だけのインピーダンスとなってる状態です。特定の周波数の時、インダクタとコンデンサによるインピーダンスが打ち消し合い、回路に流れるる電流が最大(I=V/Zr)になります。
RLCの直列回路
RLC直列回路は、図18のように抵抗、コンデンサ、コイルが直列接続されている回路で構成されています。この時、考慮するのが「インピーダンス」です。
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図18:RLC直列回路
それぞれのインピーダンスを直列回路で表すと、図19のようになります。
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図19:回路のインピーダンス
この回路が共振するための条件としては、コイルとコンデンサにかかる「インピーダンス」が等しくなるという考え方です(図20)。
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図20:共振するための条件
この時の条件式は、図21のようになります。
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図21:直列回路で共振するための条件式
帯域
ここまでの説明で、RLC並列およびRLC直列の回路において、共振周波数が何Hzになるか?ということは計算できそうですね。次に考えなければいけないことが「帯域」です。つまり、その周波数を境にどの程度の幅までを含むか?ということです。RLC並列回路を例に帯域の定義は図22に示します。共振周波数における最大電圧に対して0.707倍の電圧です。この値は実効値の係数になり、1/√2で表せます。そして、最大出力電圧に対して実効値に達した周波数ω1と、実効値まで下がった周波数ω2の差分(ω2-ω1)が帯域として定義されます。この幅が広ければ広帯域(ワイドバンド)と呼ばれ、この幅が狭ければ狭帯域(ナローバンド)と呼ばれます。Wi-Fiなどは数MHzの帯域を必要としますが、Loraなどの規格では数百KHz程度に抑えられ、限りある無線帯域を有効に活用できることになります。
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図22:帯域
計算してみましょう
実際のパーツを使って計算してます
具体的な例でみていきましょう。動画でも使用しているコンデンサは、1uFです。コイルは、22mHのものを使用しています。図2に示した角周波数ωを使用して、図6にあるインピーダンスが等しくなる条件は、図23の式になります。
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図23:共振周波数の求め方
この式に、コンデンサとコイルの数値を当てはめて計算すると、1073と導き出せます(図24)。
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図24:求める共振周波数
参考までに、1073近傍の数値計算結果をまとめました(表2)。赤字で示した部分が計算結果とほぼ等しい周波数であることもわかります。差分が+側の要因については、コンデンサによるインピーダンスの増加。-側の要因については、コイルによるインピーダンスの増加です。
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表2:計算結果一覧
このように、特定の周波数のみで、インピーダンスが変化することが「共振」もしくは「同調」ということになります(図22)。
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図25:共振するための条件
実際に測りましょう
動画で使用している回路構成を示します(図26)。
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図26:今回計測したRLC並列回路
この動画では、並列回路を中心に共振を確認しています。実際にはパーツの誤差も含まれているの、正確に1073Hzではありませんでしたが、ほぼ近い周波数を境に、信号の減衰の確認が取れました。
確認してみましょう
今回の講座の内容を理解するために、下記の2問に挑戦してみてください。答えは、次回のこのコーナーでお伝えしますよ!
【Q1】コイルを10mHで、コンデンサ0.01uFの場合、共振周波数はいくつになりますか?(小数点は第3位まで。円周率は、3.14159で計算してください。)
【Q2】3.4KHz近辺の共振周波数にするには、22mHのコイルを使用した場合、最も適したコンデンサの容量はいくつですか?
前回の答え
【Q1】667usが正解でした。
【Q2】200オームが正解でした。いかがでしたか?
まとめ
今回は、抵抗とコンデンサとコイルによる「共振回路」について学びました。今回学んだ内容は、無線などで使われているRF回路などに応用することができますので、しっかり基礎力を学んでおきましょう!Let’s Try Active Learning!今回の講座は、以下をベースに作成いたしました。
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