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共振回路のQ値
共振回路の性質を表す「Q値」について学びます。直列と並列のLC共振回路で構成されるインダクタとコンデンサを使って理想的なパーツと現実のパーツを理解し、動画で実際のQ値を確認していきましょう。
理想的なパーツと現実的なパーツ
Qの説明の前に、コンデンサとインダクタの理想と現実を理解しましょう。回路計算や回路理論を学ぶ際、どうしても理想的なパーツとして扱うことが多いです。それを、実際の回路で試すとどうしても一致しないことがあります。ここでは、実際にどのように考えていけばいいかを解説します。
インダクタ
図1に理想的なインダクタと現実のインダクタを示しています。理想的なインダクタは、純粋にインダクタとしての機能を示しますが、現実はインダクタを構成しているリード線とインダクタ部そのものに抵抗成分が含まれています。
インダクタメーカのカタログにも必ず記載されています(図2)。この抵抗成分を「損失」という言い方をする場合もあります。回路設計を行う際は、スペック規定されているものを使用することも、回路設計においては重要です。
コンデンサ
図3に理想的なコンデンサと現実のコンデンサを示しています。理想的なコンデンサは純粋にコンデンサとしての機能を示していますが、現実は、コンデンサの材質や構造によって抵抗成分が入っています。
さらに、抵抗成分に加えてインダクタの成分も含んでいます。コンデンサメーカーのサイトには、Web上のシミュレータやインピーダンス特性などの表記があります。ESRやESLといった表記があると、ESR(抵抗成分を小さくしたもの)、ESL(インダクタ成分を小さくしたもの)として考えればいいでしょう。
LC共振回路
理想的な部品と現実的な部品の特性が理解できたと思いますので、インダクタとコンデンサで構成される共振回路について、再度検討してみたいと思います。前回同様、直列と並列で考えてみます。
直列のLC共振回路
直列のLC共振回路の場合は、図5のように書くことができますが、上記の理想部品と現実部品の差があるように、実際には図6のような回路になります。
さらに、抵抗成分は、回路全体に対する抵抗成分としてまとめると、前回のRLC直列共振回路と置き換えることができます(図7)。
並列のLC共振回路
並列のLC共振回路の場合は、図8のように書くことができますが、直列回路同様、実際には図9のような回路時になります。
さらに、回路全体の抵抗成分をまとめると、前回のRLC並列共振回路と等価になります(図10)。
これらに言えることは、計算上での共振周波数は、コンデンサの容量のばらつきやインダクタ値のばらつきは多少あるものの、計算値に近い値を算出することができます。ところが、インピーダンスは、周波数にも依存することと、個々の部品の抵抗成分により無視できるものであるのか、無視できないほどのインピーダンスなのかを把握する必要があります。より精度の高い電子回路を設計するには、部品のデータシートや特性を必ず確認するようにしましょう。
Q値
Q値は、「Quality Factor」といって、共振周波数における信号の「鋭さ」として表しています。Qのイメージを掴むために、フィルタを例にしてみましょう。図11のように、入力信号を与えて、フィルタを通して、出力信号を得ます。この時のフィルタは、ある特定のバンドのみ通すフィルタBPF( Band Pass Filter)と呼ばれるものです。このフィルタの性能によって、目的の周波数ω0を中心に取り出しますが、Qが鋭いフィルタは、ω0付近に限りなく近い周波数成分のみが通過し、それ以外は通しません。ところが、Qが鋭くないBPFを通すと、目的の周波数ω0に加えて、近辺の周波数に成分も通過することになります。フィルタの仕様によっては、機能が満たされないこともあります。このように、Qの性能が回路の性能を決めてしまうため、パーツや配線などのLやCの成分を理解しておくことが重要になります。
Qの算出式
Qのイメージが理解できたと思いますので、もう少し理論を学びましょう。Qは、図12のような式で定義されています。これは、ω0を中心とした信号の強さと、その信号の強さに対して1/√2の大きさのω2とω1との差分を比率で表したものになります。このQの算出式は、非常に冗長なので、今回の説明では省略しますが、直列回路の場合と、並列回路の場合それぞれ解説します。
直列共振回路の場合
直列共振回路の場合、抵抗とコンデンサとインダクタで構成されています。直列の場合は、電流Iが一定で、抵抗R、コンデンサC、インダクタLでそれぞれ電圧が異なります。そして、共振している場合、コンデンサとインダクタでお互いが打ち消し合う状態です。この時、Qはインダクタの抵抗成分と、抵抗の成分の比率で表せます。(図13)。
そして、インダクタ側で発生したで電圧が抵抗にかかり、電源電圧に対して、何倍になるのかを示した係数が、Qになります。
並列共振回路の場合
並列共振回路の場合も、抵抗とコンデンサとインダクタで構成されています。並列の場合、電圧Vが一定で、に抵抗が入っていると言うことは、回路にかかる電圧が一定です。その時に、この抵抗で電流が消費され、直列と同じように熱エネルギーとして回路の外に放出されますが、直列の場合と違い、コンデンサやインダクタにもそれぞれ電流が流れます。共振している時は、コンデンサとインダクタに流れる電流は等しいと考えることができます。そして、そのインダクタに流れる電流と、抵抗に流れる比率でQが決まります。つまり、この抵抗を限りなく無限大∞にすることで、抵抗に流れる電流を小さく抑えることが、並列回路のQの鋭さに影響を与えます(図14)。
Q値の式
直列共振回路のQ=ωL/Rと、並列共振回路のQ=R/ωLでは、分子と分母が逆です。しかし、Qが「回路の良さ(損失の少なさ)」を表す指標だと考えれば、抵抗が大きければ大きいほど、コンデンサとインダクタに流れる電流よりも「無駄に」抵抗に流れて熱になってしまう電流が少なくなるわけですから、Qが大きくなります。Qの定義式で、抵抗が分母に来るか分子に来るかは、抵抗分がインダクタ(厳密にはコンデンサや配線にもありますが)に直列に入っているか否かで異なる、ということです。コンデンサやインダクタが直列に損失となる抵抗が入っている時は、共振回路の電流を直接妨げるので抵抗は小さい方がよく、コンデンサやインダクタが理想的で、それに抵抗が並列に入っている時は、直接には共振回路の電流を損失させないが、電源から流れる電流を抵抗に流すことになるので、抵抗の値は大きい方がいい、ということになります。
実際の共振周波数を見てみましょう。
さて、ここまで共振回路とQについて学んできました。ここでは、実際のパーツであるコンデンサとインダクタがどのくらいの周波数で共振するかを見てみましょう。
図に、動画で説明している回路図を示します。CH-Aに100Hzの矩形波の信号を与えます。ダイオードを通過して、LCの共振回路に入力されます。CH-Aの信号は、共振回路を通して、CH-Bに出力されます。また、回路は2.5Vを中心にしたいので、2.5Vに戻しています。この回路に100Hzを入れているのは、共振周波数に対して、信号のHigh期間とLow期間が十分に長く、自己共振している様子がすぐにわかるからです。
では実際にやってみましょう。この回路の、コンデンサやインダクタをいろいろ組み合わせて計測してみましょう。1μFのコンデンサと1mHのインダクタを組み合わせた例です。100HzがLowになった時に、サイン波のような波形が観測できます。これが自己共振という現象です。共振周波数はこれまで学んだ周波数と同じです。つぎに、インダクタを4.7mHにしてみます。その時の波形も、同じようなものが観測できます。これも、共振周波数に一致しています。このように、パーツを変更するだけで、共振周波数が変わることがわかると思います。
この現象をいろいろ試していくと、オーバーシュートやアンダーシュートの対策にも役に立ちます。0や1だけのデジタル回路であっても、高速な信号はアナログ回路の延長線上で考えなければいけません。
この場合の共振周波数は、計算値では5032Hzですが、画面から0.19msの差分があると読み取れるので、それを計算すると、5263Hzになります。230Hzの差があります。これは、コンデンサやインダクタの許容内誤差と考えられます。
この場合の共振周波数は、計算値では2321Hzですが、画面から0.43msの差分があると読み取れるので、それを計算すると、2325Hzになります。4Hzの差があります。これは、なかなかいい数字ですね。
この場合の共振周波数は、計算値では1073Hzですが、画面から0.97msの差分があると読み取れるので、それを計算すると、1030Hzになります。43Hzの差があります。わずかではありますが、誤差が生じています。
確認してみましょう
今回の講座の内容を理解するために、下記の2問に挑戦してみてください。答えは、次回のこのコーナーでお伝えしますよ!
【Q1】コンデンサ1μF、インダクタ1mHの場合のωはいくつですか?
【Q2】直列共振回路において、抵抗が10オームの場合、その共振周波数におけるQは、いくつになりますか?
前回の答え
【Q1】15915.507Hzでした。
【Q2】0.1μFなので、3393Hzでした。いかがでしたか?
まとめ
今回は、共振回路におけるQ値について学びました。今回学んだ内容は、無線回路やフィルタ回路などに応用することができますので、しっかり基礎力を学んでおきましょう!Let’s Try Active Learning!今回の講座は、以下をベースに作成いたしました。
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