組込み向けソフトウェアの受託開発を手掛けるDTSインサイトが、某検査機器メーカーに外観検査の実証実験用システムを納入した。既存の画像処理システムでは認識ができないケースを、エッジAIだけで解決。システム導入費を抑えながらも、高度な不良検出を実現している。この動画では、お客様が抱える課題を整理し、その課題をどのように解決に導いたのかを聞いた。
写真左上: 株式会社DTSインサイト 第二事業本部 企画部 金井 孟皓 氏
写真右上: アヴネット株式会社 エンベデッド統括本部 セールス事業部 第1営業部 部長 竹中 將記 氏
某検査機器メーカー様向けAI外観検査の実証実験用システム
製品の概要
システム概要
現行システムとは別に新たに外観検査用エッジAIシステムを構築することで、現行外観検査システムへの影響を抑制。 AIモデルはクラウドAIサービスで構築しデプロイすることで、エッジデバイスだけで不良品を検出。
弊社の特徴
Azure等のクラウドサービスやTensorFlow、Keras、scikit-learnなどのフレームワークやライブラリを用いた開発実績あり。 また、ハードウェア開発のノウハウからニーズにマッチするエッジデバイスやチップを選定する等、QCDのご要望に合わせてハードウェアからクラウドサービスの選定を含むAIシステム全体のグランドデザインが可能。
製品の特徴
- Azure Custom Visionを利用し、システム導入費を抑えつつ手間なくAIモデルを構築。
- Azure IoT Edgeを利用し、手間なくAIモデルをデプロイしエッジデバイスでの推論を実現。
- 新たに実証実験用の外観検査用システムを構築することで、現行の外観検査システムへの影響を最小化。
お客様の課題
–まずは簡単に会社紹介をいただけますでしょうか?
DTSインサイト金井:弊社はDTSインサイトと申します。事業としては、大きくはICEや計測機器など、組込開発ツールの製造販売事業とソフトウェアの受託開発事業を展開している会社でして、本日お話させていただいている私、金井は、ソフトウェアの受託開発に携わっております。ソフトウェア受託開発事業の産業分野別としては、特に車載、医療、FAに関連する受託開発を得意としており、実績も豊富にございます。また、技術領域としましては、OS、ファームウェアから組み込みアプリケーションまでの、いわゆる下まわりを得意としており、さらにPCやスマホ、webアプリやサーバ、クラウドシステムまで一気通貫で対応できる点が特徴となっております。また、昨今はAI分野にも注力をしており、とくにFA業界から外観検査AIなどの引き合いを多くいただいております。
–今回ご紹介いただく事例ですが、お客様からどんな相談を持ちかけられたのでしょうか?
DTSインサイト金井:今回ご紹介させていただく事例は、某検査機器メーカー様向けに納入した、外観検査の実証実験用システムについてです。お客様では、とある検査機器の検品工程で、製品や部品の外観をチェックする外観検査システムをすでに所有しておりまして、これまでも画像処理システムを導入し省人化・自動化を行ってきましたが、現行の画像処理システムでは、認識ができないケースがあり、その精度と検査時間を向上させたいというのが大枠のご要望でした。そこで、さらに具体的にご要望を伺っていくと、大きく3つの課題について解決が必要ということがわかりました。1つ目は、「現行の画像処理システムでは認識できない不良品を検出したい」ということです。2つ目は、「システム導入費を抑えたい」、3つ目は、「実証実験中も、現行外観検査システムを稼働させたい」ということでした。これら3つの課題が解決できるのかどうかについて、まずは実証実験を行いたいということでご相談をいただきました。
課題の解決方法
–御社はその課題に対してどんな解決策を提案されたのでしょうか?
DTSインサイト金井:先ほど述べた三つの課題をクリアするために弊社がご提案させていただいたシステムの概要としましては、現行の外観検査システムとは別に新たに実証実験用の外観検査用エッジAIシステムを構築した上で、AIモデルはクラウドAIサービスで構築しエッジAIシステムにデプロイすることで、エッジだけで不良品検出を行い、かつ現行の外観検査システムには極力影響を与えない、というものでした。課題に対する具体的な対策は、前述した3つの課題の1つ目と2つ目を解決するために、Azure Custom Visionを利用してモデル構築、および更新を行い、デプロイから実行についてはAzure IoT Edgeを利用する構成としました。Azure Custom VisionはMicroSoft社が提供する画像認識に特化したAIモデルを構築、デプロイ、改良するための画像認識サービスで、このサービスを利用することで、学習環境構築の手間をかけずに画像認識のAIを導入することが可能となります。今回のお客様の場合、すでに画像処理システムによるパターンマッチングでの不良品検出は行っており、そのパターンに当てはまらない曖昧な不良を検出したいというご要望でしたので、ディープラーニングによる画像認識を導入する必要がありました。ただし、システム導入費を極力抑えたいとのご要望もありましたので、Azure Custom Visionを利用することで手間なくAIモデルを構築し、AIモデルの構築費用を抑えました。また、手間なくAIモデルを構築できることによって、継続してモデルをアップデートすることができるようになりました。
Azure IoT EdgeはMicroSoft社が提供するIoTデバイスを管理・監視するためのサービスで、Azure Custom Visionで構築したAIモデルをエッジデバイスへデプロイし、実行させることができるサービスです。今回のお客様の場合、Azure IoT Edgeを利用することで推論処理はエッジデバイスで実施することで、システム開発時、および運用時のクラウド利用料を抑え、さらにモデルアップデート後のデプロイを手間なく行う仕組みを構築することで、開発を継続させやすい環境を整えることができました。さらに、推論処理をエッジ側で行うことで、クラウドに撮像データをアップロードするための時間が不要となり、処理速度の削減もできるというメリットもありました。このようにAzure Custom VisionとIoT Edgeを利用することで、AIによる外観検査を、導入費を抑えつつ、かつ今後も継続して使いやすい仕組みを構築することができました。
3つ目の課題を解決する方法としては、現行の外観検査システムとは別に新たに実証実験用の外観検査用エッジAIシステムを構築いたしました。イノテック社のEMBOX RE950をエッジデバイスとして採用し、物理的に既存システムと切り分けることで、現行の製造ラインに影響を及ぼさないようにしつつ、新たな外観検査システムの実証実験を行いました。このように、お客様の抱える三つの課題に対して解決策を示し、システムを構築いたしました。
なお、今回はこのような構成としましたが、必ずしもすべてのケースでこの構成が良いとは言い切れないのがAIシステム開発の難しいところだと考えています。例えば、クラウドに一切データをアップロードできないケースもあり得ます。また、Azure Custom Visionだけではモデル精度が期待にそぐわないケースもあり得ますし、製品化するにあたってはランニングコストを重視した構成とすることが望ましいケースもございます。
弊社では、今回ご紹介したAzure以外にもAWSなどの別クラウドサービスの使用実績やKeras、TensorFlowなどのフレームワーク、scikit-learnなどのライブラリを用いたモデル開発実績もございます。またハードウェア基盤開発のノウハウもございますのでニーズにマッチするチップの選定も知見がございます。弊社では、このような知見から、精度・速度・コストについてお客様のご要望に合わせて、ハードウェアからクラウドサービスの選定を含むAIシステム全体のグランドデザインが可能です。
採用理由
–なぜDTSインサイトのソリューションを採用、委託されたのでしょうか?
アヴネット竹中:弊社アヴネットは半導体、電子部品、組込製品を中心とした技術商社であり、様々なモノづくりのお客様への製品提案、供給、サポートをさせて頂いております。DTSインサイト様とは、お客様のモノづくりにおいて開発・解析ツール、受託開発を通じて長年幅広いビジネスパートナーとして協業させて頂いております。今回開発をDTSインサイト様へ委託をさせて頂いたポイントは、1つ目に、既存ビジネスでのしっかりした取組みを頂き、弊社紹介顧客からの高い信頼を頂いていること。2つ目に、画像AIの開発実績のみではなく、スタンドアローンの外観検査システム自体の開発実績があり外観検査システム自体への知見を持たれていたこととなります。
新しい取り組み
–最後に、皆様にシェアしたいこと、今後の取り組みなどお知らせください。
DTSインサイト金井:今回は外観検査領域の実績でしたが、車載、医療におけるAI開発実績も多々ございます。また、車載、医療領域を中心に、量産品、製品の開発を長年行っておりますので、実証実験以降の作りこみというところも得意としております。最終製品を前提とした実証実験から製品化に向けた作り込みまでをご提案可能ですので、まずはテストデータなどをいただければ当社にて無償でご提案させていただきます。最後になりますが、AI以外の実績も含め、弊社HPにてご紹介させていただいておりますので、ご覧いただけますと幸いです。
アヴネット竹中:弊社アヴネットはAzureクラウドをはじめ、Edge機器、通信機器を幅広くラインナップさせて頂いており、お客様のIoT、AI、DXなどで抱える様々な問題点や取り組みに対して幅広い製品のご提案、サポートをさせていただいております。
–本日は学びの多い貴重なお話をありがとうございました。
株式会社DTSインサイト
弊社はICEや計測機器など、組込開発ツールの製造販売事業とソフトウェア、ハードウェアの受託開発事業を展開している会社です。
受託開発事業の産業分野としては、特に車載、医療、FAに関連する受託開発を得意としており実績も豊富にございます。また、技術領域としては、FPGAを含む回路設計、OS、ファームウェアから組み込みアプリケーションまでの、いわゆる下まわりを得意としており、さらにPCやスマホ、webアプリやサーバ、クラウドシステムまで一気通貫で対応できる点が特徴となっております。
加えて、昨今はAI分野にも注力をしており、特にFA業界から外観検査AIなどの引き合いを多くいただいております。
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