Mbedデバイスからサービスまで。オール東芝のIoTプラットフォーム戦略

Arm® Cortex®-M0プロセッサやCortex-M4(FPU機能搭載)プロセッサを搭載したマイコンを展開する東芝デバイス&ストレージは、エッジノードのOSとして注目を集めているArm Mbed™ OSの認証を取得した。これに伴い、IoTインテグレーションを担う東芝デジタルソリューションズと共同で、Arm Pelion™ IoT Platformも活用しながら、IoTの進化に"オール東芝"で取り組む。

メインイメージ
集合写真(左より)
東芝デジタルソリューションズ株式会社 インダストリアルICTセキュリティセンター セキュリティ技術部 主務 原田 崇 氏 
東芝デジタルソリューションズ株式会社 インダストリアルICTセキュリティセンター セキュリティ技術部 主務 森尻 智昭 氏 
東芝デジタルソリューションズ株式会社 インダストリアルICTセキュリティセンター 主査 斯波 万恵 氏 
東芝デバイス&ストレージ株式会社 技術企画部 技術戦略企画担当 参事 木村 尚寛 氏 
東芝デバイス&ストレージ株式会社 統括技師長附 吉森 崇 氏 
東芝マイクロエレクトロニクス株式会社 ミックスシグナルコントローラ統括部 ミックスシグナルコントローラ応用技術部 ミックスシグナルコントローラ応用技術第二担当 前原 貴 氏
東芝マイクロエレクトロニクス株式会社 ミックスシグナルコントローラ統括部 ミックスシグナルコントローラ応用技術部 ミックスシグナルコントローラ応用技術第二担当 参事 廣里 暢盛 氏 
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東芝のCortex-M0、Cortex-M4(FPU機能搭載)マイコンがMbed OSの認証を取得

――今日は、東芝にお邪魔しています。マイコンなどの半導体デバイスを手掛ける東芝デバイス&ストレージ株式会社、東芝マイクロエレクトロニクス株式会社の皆さまと、様々なICTサービスのインテグレーションを手掛ける東芝デジタルソリューションズ株式会社の皆さまに、Mbed OS、Pelion IoT Platform、そしてIoT分野で注目されているエッジコンピューティングを中心に「東芝グループのIoT」についてお伺いします。

全員:よろしくお願いいたします。

――まずMbed OSについて伺いますが、東芝デバイス&ストレージは2018年5月8日付で「Arm® Cortex®-Mコア搭載マイコンのMbed™ OS対応について」というプレスリリースを出されました。

廣里:Cortex-M0プロセッサやCortex-M4(FPU機能搭載)プロセッサを搭載したさまざまなマイコン製品(TX/TXZファミリー)を提供している東芝デバイス&ストレージでは、2016年からMbed OSのポーティングに取り組んできました。今回、Cortex-M0搭載のTX00評価ボード「AdBun®-M066(型番:TMPM066FWUG)」と、Cortex-M4(FPU機能搭載)搭載のTX04評価ボード「AdBun-M46B(型番:TMPM46BF10FG)」の2製品でMbed OSの認証を取得しました。(図1)。お客様から見て競争力があり魅力のあるMbed対応マイコンボード製品となるように努力いたしました。また、認証取得により、これらボードはMbedのウェブサイトにも掲載されています。評価用ボードは、センシスト社チップワンストップ社で販売しています。是非、ご覧になってください。

図図1:Mbed OS認証予定のTXZ評価ボード(左)と、Mbed OS認証済のTX04評価ボード(右)。
※1 最終的な認証結果は、認証機関に委ねられます。

――Mbed OSの特長を教えてください。

前原:Mbed OSは、IoT時代に求められるWi-Fi®やBluetooth®などの、さまざまな通信プロトコルに対応したコネクティビティが大きな魅力です。また、実際の開発においてもサンプルコードがMbedのウェブサイト上に数多く公開されていますので、お客様は、これまで以上にシステムを構築しやすくなるはずです。また、こうしたオープンなリソースを世界共通の資産として利用できるMbedは、 わずかな投資でOSの開発環境を整えられることも大きなメリットです。

吉森:Armさんは当初Mbedの展開先をこれまでアクセスできていなかったメーカーズやホビー層にまで広げることも目的とされていましたが、今は産業分野などのプロ向けIoT分野も含めた総合的なIoTインフラとして定着することを目指していると聞いています。産業分野はまさに東芝の得意分野であり協調もしやすい構造と考えています。

廣里:日本のOS事情としてはTRON系や、OSレスで開発するケースが多く見られます。Mbed OSは非常に軽量でデバイスサポートも優れていますので、PoCの立ち上げ加速にも効果が高く、いずれ海外と同じように主流のひとつになっていくと見ています。

――Mbed OSが活躍するのはエッジコンピューティングの領域だと思いますが、東芝グループとして、その前提となるIoT全体の取り組みについて教えてください。

斯波:東芝デジタルソリューションズでは「SPINEX™」(スパインエックス)というIoTアーキテクチャを様々な産業に向けて発信しています。例えば、エネルギー、社会インフラ、物流・流通、ビル・施設、製造などのお客様にご利用いただいております。

原田:SPINEXは様々なテクノロジーから構成されています。物理空間を仮想空間に写像する「デジタルツイン」、識別や予測/推定を高精度に行う産業向けアナリティクスAI「SATLYS(サトリス)」、人の意図や状況を理解し、人にわかりやすく伝え、サポートするコミュニケーションAI「RECAIUS(リカイアス)」、現場でのリアルタイム処理とクラウドでの処理を最適に連携させる「エッジコンピューティング」、そしてこれらの土台となる「IoTセキュリティ」があります(図2)。

図図2:東芝グループのIoTアーキテクチャー特長と強み。

斯波:クラウドサービスに着目するとやはり海外が強いですが、エッジのチップから分析サービスまで一気通貫したセキュアなトータル・ソリューションで強みを出していこうと考えています。今回発表した、東芝デバイス&ストレージボード製品のMbed OS認証取得は、オール東芝でお客様へご提案していくための大きな一歩です。

吉森:当初、Mbedについては半導体方向から東芝デバイス&ストレージがアプローチし、その後東芝デジタルソリューションズがバーチカルソリューションとセキュリティという観点で協調を始めていましたが、2017年度に双方の活動を連携させることに合意し、現在に至っています。結果、マイコンを中心としたコネクティビティの実現として、Mbedプラットフォームや、IoTアーキテクチャ「SPINEX」、それぞれの要素技術、そしてインテグレーションに至るまで提供できるようになったのは、大きな成果だと思っています。

IoTのデータ集約に適したPelion IoT Platform。エッジからクラウドへのセキュアパス

――Mbedに関連して、Armは2016年にPelion IoT Platform(旧:Mbed Cloud)を発表しています。まず、Pelion IoT Platformとはどのようなサービスなのでしょうか。

斯波:Mbedの特徴のひとつは、MbedデバイスからPelion IoT PlatformまでEnd-to-Endでセキュアなデータ通信を提供することです。一方で、分析などの機能は持ちません。そこはAmazon Web Services(AWS)やMicrosoftのAzure、あるいはオンプレ上に構築したデータ分析サービスに任せるというコンセプトです。Mbedを利用することによりMbedデバイスで取得したデータを、分析サービスに簡単かつ安全に受け渡せるようになります。東芝デジタルソリューションズはPelion IoT Platformのリードパートナーとして、IoTのセキュリティ確立を中心にArm社と2016年から協業しています。

森尻:Pelion IoT Platformをお試しになるのなら、まずMbedにパートナー登録していただきます。ウェブサイト(https://cloud.mbed.com/)の「Request information」からローンチ・パートナーの申請を行い、申請が通るとPelion IoT Platform接続用の証明書が発行されます。その証明書をMbed OSに組み込むことで、MbedデバイスからPelion IoT Platformに安全にデータを送信できるようになります。そして、このデータをアプリケーションクラウドと連携させることができます。

――今のお話だと、一般的に言われるクラウドより、Mbed OSからAWSやAzureに対するアクセスパスを作るための仕掛けのように感じられました。

森尻:そのとおりです。私たちのようなインテグレータ視点でもセキュアなアクセスパスという理解で捉えています。

斯波:IoTシステムの導入を望まれるお客様からは、Mbed OSやPelion IoT Platformの指定はほとんどありませんが、今後はSPINEXにおけるセキュアなIoTデータ収集、デバイス管理のひとつとして、Mbedエコシステムを加えた提案も手掛けていきたいと考えています。

――Linux®やAndroid™が登場したときには、オープンソースに対する品質的な不安などが指摘された歴史があります。Mbed OSやPelion IoT Platformはいかがでしょう。

吉森:これまでは品質面の担保を考えると、新しい技術やサービスに対して警戒感があり、出足が遅くなる傾向が見られました。しかし、Linuxをはじめとするオープンソースの活用は、バグが少なく、セキュリティも高く、さらにコストは安くなることが証明されています。もはやオープンソースのモデルを警戒する必要はなく、よりよい製品を容易に、そして高品質で開発できる時代になったと考えています。

東芝デバイス&ストレージと東芝デジタルソリューションズが共同で価値を創造し、エッジコンピューティングを推進

――続いてIoT市場の動きをお伺いしたいと思います。産業分野においてIoTの導入事例や成功事例が少しずつ増えてきているように感じますが、最近の市場をどのように見ていますか?

吉森:すでに大量に普及していると見る方もいれば、まだまだこれからと見ている方もいます。後者の印象はIoTがインダストリアル・フィールドやスマートシティなどから始まったことで、メディア露出がコンシューマ製品のように高くないためでしょう。実際はかなり広まっていて、今後もさらに伸びると認識しています。たとえば電力のスマートメータなどは単独で規模の大きなIoT実装のひとつとして捉えることができます。今後は中規模・小規模なIoT実装を含めて非常に多くのアプリケーションで、IoT応用が同時並行に進むものと期待しています。

斯波:製造業のお客様からも、現場にデータはあるものの、どう活用していいか分からない、といったご相談を受けることが多くなってきました。また、前段階として、データを取る仕組みがないのでセンサーを付けたいが、どうすればよいか、といったご相談もあります。

吉森: IoTのビジネスは「ロングテール」だと言われています。大口需要だけではなく、小口需要がたくさん存在しており、「トリリオン(trillion)センサー」といって1兆個のセンサーが使われる時代が到来するとも言われています。1兆個という数は、例えば100万個のセンサーが100万種類のアプリで使われて初めて到達する数字ですから、100万のお客様と連携する仕掛けが必要になるわけです。

廣里:これまで、東芝デバイス&ストレージのような半導体ベンダーにとっては一部のお客様が大量に購入されるケースが主で、ロングテールの小口ビジネスは、あまり得意ではありませんでした。こうした市場の流れにきめ細かく対応していけるかどうかが、今後の大きな課題のひとつでした。

吉森:今回のMbed OSの認証取得、東芝デバイス&ストレージと東芝デジタルソリューションズの連携は、この課題を解決し、さらに良いサービスを提供できることに寄与できると考えています。

――最後に、これからの取り組みについて聞かせてください。

斯波:繰り返しとなりますが、東芝デバイス&ストレージと東芝デジタルソリューションズの連携によりプラットフォームからインテグレーションまで提供できるようになった強みを、是非ご利用いただきたいと考えています。

斯波:東芝デジタルソリューションズが提供している「IoTスタンダードパック」という、幅広いお客様へ柔軟に対応できるソリューション・パッケージにより、ロングテール時代のお客様と連携を強めていきたいとも考えています。IoTを活用して変革を進めたいと考えるお客様は、国内外問わず多くおられますので、引き続きオール東芝として価値提案に努めて参ります。

木村:エッジコンピューティングへの関心の高まりを受けて、今回認証を取得したTXマイコンファミリーだけでなく、さらに高機能なTXZマイコンファミリーにもMbed OS認証の拡充を計画しています。具体的には、モーター制御に適したベクトルエンジン内蔵マイコンでのプラットフォーム認証を予定しています。

廣里:この取り組みにより、エンドポイントに必要な数々のコンポーネント、例えばBluetooth Low Energyコントローラや電源用のディスクリート素子など、東芝の強みとする技術を中心に、Mbedなども含めた柔軟な提案を進めていきたいと考えています。もちろん、マイコン自体のさらなる開発にも取り組んでいます。引き続き、ご期待ください。

――ありがとうございました。

APS EYE'S

東芝デバイス&ストレージのTX/TXZファミリーがMbed OS認証を取得、東芝デジタルソリューションズのインテグレーションサービスのSPINEXには、Pelion IoT Platformを統合。東芝グループの一気通貫したIoTプラットフォームは、強みであるモータ制御や、セキュアな通信をベースに、見える化・最適化・自動化・自律化のサービスを提供する。